直木賞受賞作家・桐野夏生による表現の自由を題材にした小説。

主人公は性的な表現のユニークな作家。 ある日、総務省の管轄である総務省文化局の文化文芸倫理向上委員会と名乗る組織から通達があった。 「施設にて研修を行う」と。

その組織の通達の元収監された施設によって思想の調整が行われる。 主人公は何とかしてこの施設を飲み生き延びようとするんだが、結末がとてもとてもおどろおどろしい。

表現の自由を題材にした作品は古今東西よくあるもの。1984だとか。しかしそれらの多くは政治的主張といった扇動的なものを抑圧するためのもの。飽食で成熟した社会の今、主に自己表現の芸術性といった表現の自由が脅かされている。そこにフォーカスを置いた作品だからこそより高い共感を生んでいるのではないだろうか。

とても読みやすくて没入感が非常にある作品だった。