25歳で前人未到の七冠を達成した棋士・羽生善治氏の著書。

本著は文庫本ながら400ページ弱となかなかのボリュームで構成は羽生氏による執筆が50%、インタビューが50%と言う構成になっています。

読んでの感想は「長年棋界のフロントマンであり、カリスマであるのはこの人の個性ゆえだろうなぁ」と感じました。

インタビューも自分の言葉や考えを強く主張する場でなく、自分の思考を言語化する糧を聞き手に教授してもらうような場と捉えてる姿勢を文面から感じた。そして聞き手に口調や内容を合わせ、柔軟に対応している。

かと思えば、「将棋はゲーム」と発言したり、先輩方を差し置いて上座に座ったりと不問律を破ったりと人を惹きつけるような尖ったエピソードもお持ちだ。

端的に言えば食えない人物だろうなぁ。そんな人物だから、一挙手一投足に人々は惹きつけられるんだと思います。(棋士の方に一挙手一投足という言葉を使うのもなんだか変だ。)

裏表紙のあらすじには「ビジネスにも通じる発想のヒントが満載です」とありました。本を手に取った時には「よし、ヒントを読み取ってやろう」という気概でしたが、羽生善治氏の人物像にさらに魅了され、読み終えた頃には当初の目的をすっかり忘れていました。

そんな一冊です。「聖の青春」が公開を控えていますが、そちらは故・村山聖氏に立ちはだかる壁として羽生善治氏が描かれています。合わせておすすめします。