ポール・オールスターによる小説。

80年代アメリカ文学を代表する本作はとてもハードボイルド。

ブルーは依頼人・ブラックより対象・ホワイトを追跡する。ただそれだけ。それだけの話だ。

作品では決して会話が組み込まれておらず、ただただ話が展開する。

話し言葉や印象が深まらないため、登場人物の個性というのを感じにくい。しかしながら探偵を生業としている主人公・ブルーをはじめ、個性や顔を持たない、”幽霊”である彼らには適した文体であろう。

 

読み進める。会話がないというのは決して読みやすいものではない。没入はするものの、作品と読み手に少し距離感ができる。この距離感は作者の意図したものだろう。というのも本作は時系列に沿ってホワイトを尾行している様子が描かれているのと併せて、ブルーの過去や空想の世界が組み込まれており、とてもパラレルに行き交う。そのため本作全体に入れ込み、把握するためには絶妙な距離感が必要となったのであろう。

 

モダニズム漂う本作は、オールスターの名前を広めた”ニューヨーク三部作”の1つだ。

それらも読み進めていきたい。