長年企業戦略策定のバイブルともされている企業参謀。今回は初版を読みました。
著者は日本で最も名の知れたコンサルタント・大前研一氏。マッキンゼーにて日本支社社長・アジア太平洋地区会長を歴任し、シンガポールの経済戦略策定や、マレーシアの国家戦略アドバイザー、遼寧省・重慶市および天津市の経済顧問を務めるなど国家レベルのコンサルティングをされてきた。3C分析開発、ボーダレス経済学と地域国家論を提唱するなど彼の功績は華々しいものです。
そんな彼は多くの書籍を記してきました。そんな彼の出世作であり、1975年の出版以来未だに広く読まれているのが”企業参謀”です。
本著で彼は戦略的思考について記しています。戦略的思考は問題発見・解決に対して根源的な課題追求の姿勢、そしてその課題に対してどのような打ち手を講じるべきかといった視座を提供しています。本著では事業ポートフォリオの再考や収益性の乏しいプロダクトの市場撤退戦略の意思決定、水産業者による公海での乱獲による外交問題といったケースを通して戦略的思考を解いています。
大前氏が多くのビジネスマンに支持される点はユニークな視点だ。その視点の裏にあるのは彼が課題の抽象化・分析の簡略化に長けていることじゃないでしょうか。多くのコンサルの書籍はだいたい中身が薄っぺらい…それは課題設定自体が浅いからでしょう。
大前氏は要点は抑えつつ課題の解像度を下げて抽象化し、なおかつ分析でも簡略できる点は非常に簡易な計算で行います。本書を見てもらえばわかるが四則演算で多くの分析を行ない、打ち手を検討しています。仔細な分析は詳述しない。だが課題設定が的確でロジカルな打ち手を披露する。そんな天才的な思考に多くの人が魅了されているのでしょう。
内容には若干当時の時代性があります。2014年に最新版が出ているのでそちらも読みたいところ。著書には関係ないが、彼は東京都知事選に1995年に出馬していた。もし当選していたら”空白の20年間”なんぞなかったのではと思ってしまいます。
コメントを残す