メディア研究の第一人者による研究レポート。

 

著者であるレフ・マノヴィッチ氏はデジタル文化での主導的なThinkerだ。彼の功績はデータ・サイエンスを元にした現代文化分析で多大な業績を残している。研究者であり、教育者であり、アーティスト。多彩な顔をもつ。

 

そんな彼はデジタル時代に置けるニューメディアの分析で第一線を行く彼が目をむけたのがInstagram。Instagramには写真を同じフォーマットにて扱うという従来のミディアムには存在しなかった一貫したサンプルを収集できるプラットフォームだと彼は価値を感じ、都市間におけるInstagramから見える文化の差異を見出そうとした研究をまとめたのが本書。英語以外だと唯一日本語に翻訳されているそうなんだけど、日本語版は日本のメディア研究者たちによるマノヴィッチの理論を保管するため、ないしは日本における関連研究をまとめてあげていただいてるのでとても読み応えがある。

 

彼はインスタグラムにあげられる写真をプロフェッショナル写真/デザイン写真/カジュアル写真 に分類。

プロフェッショナル写真とデザイン写真は美的感性に基づくもの。

だけどもプロフェッショナル写真は従来の美的観点に立脚した写真 (3分割法とか)。それに対してデザイン写真は新たな感性に基づいた写真だ。例えばキンフォーク的な彩度をおとし、白レベルをあげたような写真。「エモい」という言葉にまとめてもいいかもしれない。

ちなみにカジュアル写真は自撮りとかのスナップフォトのようなもの。

 

この論考にあたり、著者はInstagramismという造語を提案。

2010年代初頭に登場した新しいグローバル・デジタル・ユース・クラスの美意識の総称としている。Instagramは写真でモノを語るプラットフォームだ。

だからこそレンズがとらえ、フィルタによって加工が施されたメディア形式は、特定のコンテンツと結合しやすい。これらはこれまた特定の感覚・姿勢・調子を生み出す。

 

Instagramismしかりデザイン写真しかり、どことなく理解はできる。

そして多くの人々はこれをメディウムの興隆とともに、廃れたメディウムに対しての反骨心や時代への反発と関連付けやすい。

 

しかしマノヴィッチは語る。

これらは前時代よりの主流に対して反発ではなく、むしろ共存を好んでいると。だからこそ新しい時代の世代は自分たちが好きなブランドに対して流行り廃り関係なく、楽しむのだ。

かなり大胆に端折っているから詳しくは本著を:)