イギリス人作家であるオルダス・ハクスリーによるSF史に大きく名を残した名著。

2大ディストピア小説と言われるほどにこの作品は有名だ。
ディストピア小説ってのはいつの時代も、特に暗い時代にはよく引き合いに出される。
もう一方の2大ディストピア小説”1984年”は記録の改竄と訂正を職務とする主人公、思想警察やビックブラザーの存在など今の政治劇に照らし合わせるのが好きな人も多い。

1984年に負けず劣らず”すばらしい世界”も政治思想と結びつきが強い。
ただ、人権派を除き多分多くの人が嫌悪感を懐きにくい世界観だ。

圧倒的な社会主義、ただ人々は出生直後からの条件付け(画一的な思想を植え込むための洗脳行為)により、統制された社会に疑問を抱かない。
ストレスが積もればソーマ(政府が精製する合法覚せい剤のようなもの)を服用すればいい。ソーマを飲めば心のたがは外れ、桃源郷のような世界に浸れる。ソーマの使用は奨励されている。

消費は推進され、男女の関係は決して交際だとかに縛られることなく誰しもが社会的制約なしに、むしろ複数の肉体関係を持つことが健全だとされている。

欲を止めるものは何もない。ただ探求欲だけは良しとされない。自ら与えられた仕事に求められる知識以上のものは必要なく、むしろ学習は反社会的な行いとされている。

現実世界で私たちが”逃げ”であったり、”堕落”であったりとされる快楽行為が社会の規範的なもの。
この世界観は多くの人が前向きに受け入れるやもしれない。

ただしっかりと読み進めていけば気持ち悪さだってしっかりわかってもらえるはず。野人とされるジョンやバーナードなど異端とされるものを排斥する人々の動向、思想教育の恐ろしさ、全体主義の脆さ….

もしかしたら僕らはフォードを奉るこの世界になりつつあるのかもしれない。

 
それにしても先日のおもしろかったレポートで紹介した、BCGが請け負った経産省のレポートでトレンドのひとつとして、向精神薬(説明書きとかなく、本当にちょっとだけ)が入ってたけども….もしかしたらソーマのような存在ももうすぐそこにあるのかもね。