クリエイター・佐藤雅彦氏によるコラム集。
この方のことは随分と昔から知っている。
たぶん多くの人が名前は知らなくとも作品には馴染みがあるはずだ。
僕の場合は物心着いた時にはだんご三兄弟を口ずさみ、そしてNHKではピタゴラスイッチをみていた。
彼の仕事は多岐に渡りすぎてなんと称せばいいのかわからない。
クリエイティブディレクターというのがきっと便利な言葉なんだろうが、
彼はゲームを作るし、作詞もするし、映画も作るし、コピーももちろん作る。そして表現の方法を作る研究者でもある。
そんなユニークで多才な彼がなぜそこまで裾野を広げることができるのか。
この本をみているとその端々に触れることができる。
彼は僕らが日常の中でさっと見逃してしまう光景に疑問を投じることができる。
そしてそれを疑問をきちんと解答へと順序立てていく能力に長けている。
もちろんその中でそれを言語化することも彼の大きな才能だ。
彼の日々の中でである疑問をコラム化し、読み手に興味と気づきを与えてくれる。
はじめて東京に行った時、彼がディレクションをしたこれも自分と認めざるをえない展に足を運んだ。
福岡では見かけないメディアアートというジャンルに高校2年生だった僕がひとりはしゃいで、そして東京というところに憧憬を抱いたことを今でも鮮明に覚えている。彼が追求する道を後追いしたくてSFCに入ったものの、すでに彼は常勤の位置から外れていた。そんな僕にとってこの本はその場に居たかったであろう、SFCの教授に着任する直前から毎月連載、そして研究会での生徒との日々は想像できるだけに羨ましい限りだった。
結局内容という内容が特にないが、これで十分。
あとで僕が見返した時に「僕は満足した」ということが十分に書き残せたと思うので。これにて閉幕。