経済安全保障の深層-課題克服の12の論点-(編著:玉井克哉・兼原信克)を読んだって話。
政策提言を行う技術安全保障研究会メンバーによる経済安全保障に関する提言を取りまとめた一冊。
座長を務める玉井克哉先生は大学時代にSAとしてお世話になった先生であり、当時知的財産に関してご自身の経験も含めた幅広い講義は鮮烈に覚えている。ハーバーボッシュ法のハーバー氏とボッシュ氏の二人の人生譚はとても感銘を受けた。
さて、そんな玉井先生が上梓されていた書籍で思わず手に取った。内容は知的財産や高度人材、サイバーセキュリティといったソフト面の防衛政策に関する提言が詰まっている。海外の安全保障戦略を参照に、日本における課題を取り上げている。セキュリティクリアランス制度の導入や防衛産業の内製化など非常に具体的だ。特に台湾有事など中国によるサプライチェーンに対する制裁政策に備え、提案内容は製造産業の内製化や懸念国から友好国への生産拠点の移行、はたまた部品の再利用のリマニュファクチュアリングまで含まれる。リマニュファクチュアリングはあまりにも長期的な計画になるため現実的ではないように思える一方で要警戒国がどのような軍事戦略をとって来たかも踏まえ紹介しているために、対策の緊急性がわかる。
安全保障の現状認識をアップデートする上で最良の1冊。