未来のかけら-科学とデザインの実験室-を観てきたって話。
デザインエンジニア・山中俊治による科学とデザインの接点をキュレーションした展覧会。
日本を代表するプロダクトデザイナーである氏は近年デザインエンジニアと名乗っている。そこには一般的な外観や形態を設計するデザイナーでありながら、工学的なエンジニアリングの知識も携えた超越的な職能である。だからこそ彼の作品には美意識と合理性が互いに尊重するように共存している。
ユーザビリティや人間工学といった工学的なアプローチのデザインからまた一つ枠組みをこえ、より大きな科学というコンセプトに挑んできだ。ロボット工学研究者の古田貴之氏との作品制作から現在は東京大学で行ってきた他の研究者との共同プロジェクトの数々まで。そんな作品群の紹介と氏の周辺で同じ志で取り組む作家たちの作品をさまざま紹介している。
エントランスのディレクターズメッセージが心打たれるものだったので抜粋する。こんなプロローグから始まりとてもワクワクさせられる内容であった。
いつの時代も、最先端の科学技術とデザインはすぐそばにありました。科学者が生み出す新しい知識や技術はデザインを通じて人々の元へ届けられました。デザイナーによって開かれた新しいライフスタイルは次の研究のトリガーであり続けました。しかしながら科学者たちの本当の関心は大いなる心理を探求することにあり、デザイナーたちの目標は人々の幸福な体験や豊かな社会の実現にあるので、両者は必ずしも同じ道を歩むことができませんでした。科学とデザインは近くにいながら、その間には超えがたい溝もあるのです。
そのような緊張感をはらんだ科学とデザインの関わりには、初めてかのような新鮮な出合いがあり、葛藤があり、ドラマがありました。そして時代ごとに、自動車や家電、コンピュータ、スマートフォン、SNSなど、私たちの生活が一変するようなイノベーションを生み出してきました。
本展は、今まさに起こっている科学とデザインの邂逅により芽生えつつある「未来のかけら」を探るものです。
ディレクターズメッセージより