好奇心とイノベーション-常識を飛び越える人の考え方-(著:坂井直樹)を読んだって話。
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コンセプター・坂井直樹氏による対談集。
「コンセプター」というデザインサイドにもビジネスサイドにも立てる看板を掲げ、クリエイティブの世界を切り開いてきた氏。
今ではクリエイティブディレクターという肩書きの定義を広げ、サービスデザインの領域を中心としたビジネス領域に踏み込むデザイナーが多い。このクリエイティブディレクターは元々広告デザインの責任者に冠されるものであったが、裾野の広がり方は言わずもがなのものになっている。
しかし坂井氏はコンセプターというコンセプトの開発を主とした切り口でデザインやマーケティングで仕事を広げてきた。御歳は今年で73歳。
SFCで出会った氏は本当に鮮烈で、私自身が歳を重ねる度に「坂井さんはこの歳で〇〇の仕事をしていたんだな」と考えるほどに影響を受けた存在だった。授業を受け、その足で講演イベントについて行って、かばん持ちみたいにかわいがってもらったこともとても懐かしい。
そんな坂井先生による新著なのだが、改めて先生の好奇心に刺激を受ける。
松岡正剛氏を除けば対談相手は皆ふた回り以上も年下の存在だ。場数や実績も重ねた氏の対談は相手に対して丁寧に、真摯に、本当に学び取ろうとする強い好奇心と敬意を学ぶ。実るほど頭を垂れる稲穂かな、と。
対談で語られているのは集合的に生産性を高める形式知的な経営ノウハウではない。そして美しいレトリックで彩られた美談のクリエイティブとも違う。対談で登場するのはそれぞれが未来を描き、それを実現しようとする実践者たちばかり。
坂井氏が類稀な審美眼で彼らを選び、本対談をまとめた訳なので、これも一つありえる未来ばかりなのだろうな。