コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画 (著:冨山和彦)を読んだって話。
企業再生のプロ・IGPIの冨山和彦氏による指南書。
BCG傘下のコーポレートディレクションや産業再生機構の立ち上げを行い、トップを歴任。現在は2007年に立ち上げたコンサルティング・企業再生を行う経営共創基盤(IGPI)のCEOを務める。
企業再生の件数は数知れず。JALやオムロンなど。
そんな彼による新型コロナウイルスによる経済危機における企業戦略を指南した著書。第1刷が5月10日なので、この手の本で実務的なものでは最速ではなかろうか。
かなり乱暴にこの本の要旨をまとめてみる。
想定される対局
\n\n\n\nローカル▷グローバル▷ファイナンス
波及する経済危機の到来
\n\n\n\n経済危機を分析するため、企業群を3つのセグメントにわけて説明している。L型(ローカル型企業、主に中小企業)、G型(グローバル型企業、おもに大企業)、F型(ファイナンス群企業、主に金融機関)としている。
通常の経済危機は金融危機を端に発するF型から波及するものだ。ところが今回は消費停滞から始まるため、L型から広がる。
またリーマンショック時は資本自由化に消極的だった中国は影響が限定的だったため、経済回復の牽引役となったが、今回は中国も影響が大きいため中国頼みの回復は期待できない。
第一波:L型における消費の冷え込み・レイオフ
\n\n\n\n日本のGDPの7割をしめるのがこのL型、中小企業群によるものだ。また雇用も全体の8割を担う。つまり日本経済の根幹である。
そんな中小企業群にダイレクトに影響する。また雇用も多く喪失することが想定される。
第二波:G型の需要消滅
\n\n\n\nサプライチェーンショックは序章に過ぎない。その後の消費停滞による需要消滅が大きな課題である。特に高価な耐久消費財へのインパクトは大きい。
\n\n\n\n第三波:F型の信用創出能力の低下から実体経済への影響
\n\n\n\n現状況において、多くの企業による借り入れは赤字補填融資となる。借金は借金、返済能力が弱体化し回収見込みが低下し、不良債権化する事案も生まれてくる。そうなると流動性問題からソルベルシー問題になる。
金融機関が持つ信用創出能力が低下し、金融収縮が起きる。そうなるとこれがL型・G型を含む実体経済にさらに影を落とすこととなる。
経済危機において求められる体質・戦術
\n\n\n\n経済危機に強い企業の財務体質
\n\n\n\n経済危機において求められる企業の財務体質は手元流動性(現預金)の潤沢さ
金融機関との従来からの信頼関係
平時における稼ぐ力(特に営業CF)
自己資本の厚み
求められる戦術
\n\n\n\nPL目標を捨て、日繰りのキャッシュ管理に切り替える
\n\n\n\n基本的に企業の実態把握はPLベースとなっている。しかしPLベースの指標では、実態把握にタイムラグがあるため、有事には不向き。まずは迅速に日毎のキャッシュ管理ができるスキームを作成すること(最悪、Execelでも可)。そして経済危機が長引く場合、この先1年間のキャッシュポジション・シミュレーションのシナリオを策定し、随時アップデートすること。
\n\n\n\nとにかくシナリオプランニング
\n\n\n\n常に想像力を働かせ続けなければならない。必要なことは火事場を戦い抜くファイティングスピリット、そしてできる限りのシナリオプランニングとコンティジェンシープランを持つこと。「杞憂で終わってよかったね」となるのが良い。
\n\n\n\nキャッシュを確保すること
\n\n\n\n資本の輸血は大きく2種類にわけられる。エクイティ性資金とデッド性資金だ。エクイティ性は給付金などのもらい切りのもの。これは取れるものはまず取ること。
そしてデッド性資金に関しても同様。銀行から借り入れられる段階でとにかく融資をお願いした方がよい。金利や手数料は企業の生死に比べればささいな保険料と思うべきである。
トップダウン型リーダーシップへの切り替え
\n\n\n\n平時はコンセンサスをまとめたり、全体調和型の経営も良い。だが、有事においては朝令暮改も辞さないトップダウン型のリーダーシップが有利となる。その点で言えば身軽でオーナー企業の多い中小企業は有利である。
その反面、社内にプロフェッショナル人材が不在だ。そのため、中小企業は有事に外部機関(メインバンクや商工会、弁護士や税理士など)にきちんと頼ることも大切。
業務執行体制の有事仕様への切り替え
\n\n\n\nトップダウン型の経営移行の打ち手の1つとして、業務執行体制の切り替えがある。平時のCFOライン・COOライン・CSOラインを取りまとめ、CEO直下に財務・実務・情報を集約すること。
\n\n\n\n捨てる覚悟
\n\n\n\n企業存続のため、リストラや取引先の打ち切りなど切り捨てることを考えなければならない局面があるとする。その時には腹をくくって、優先順位をつけ、トリアージしていかなければならない。なあなあにしてれば、全ステークホルダーが共倒れしてしまう。
\n\n\n\n社内の透明性
\n\n\n\n平時・有事を問わず、BadNewsは蓋をされがちだ。しかし、それでは膿も悪化し、致命傷となる。有事においては痛切だ。そこで企業内での透明性を高めなければならない。りそな再生の細谷氏などが好例。
\n\n\n\nアフターコロナを見据えて
\n\n\n\n以前よりモノからコトへと消費トレンドがあった。これは非常事態宣言を経て、ますます加速するだろう。遠隔医療は感染リスクもない、またストレス下においていかにエンタメが大切かを痛切した。今後ますますこのモノからコトへのトレンドは加速するだろう。
また、多くの企業がリモートワーク導入などで地方移住の可能性も見えた。様々な点で企業の構造改革にはっぱがかかる好機と言える。