カーボン・アスリート-美しい義足に描く夢-(著:山中俊治)を読んだって話。
カーボン・アスリート-美しい義足に描く夢- Written by 山中俊治 Shunji Yamanaka
プロダクトデザイナー・東京大学特別教授である著者のプロジェクトをまとめたノンフィクション。
著者が慶應義塾大学SFCの教授職に着任した当時、競技用義足にデザインの概念が及んでおらずエンジニアによる設計だけを考慮した先の形状となっていた。ユーザビリティや意匠設計は及んでいない。しかしこれにはユーザーが圧倒的に少ないことや切断面や部位が個人ごとに異なることなど、ニッチすぎる経済合理性が働かないことによるもの。商業デザインはマスである対象にしか及ばない資本投下である。
氏は以前より”タダ働き”と自称するデザイン活動を行なってきた。アカデミアだからこそ研究としてそれを行えるとこのプロジェクトに挑んだ。
以前からこのプロジェクトの存在はもちろん知っていた。知っているつもりでいたからこの書籍は未読であった。しかしデザインへの憧憬に駆られ、手に取る。競技者や技師、学生たちとのチームプレーやプロダクトデザインの奥深さ、そして課題解決デザインの苦労とやりがいを切に感じる。学生たちの葛藤は自分自身を鼓舞させてくれる。そして大きなプロジェクトも小さな一歩から始まることを改めて教えてくれる。
今まで読んでいなかった後悔の反面、今だからこそ読む価値があった一冊。